◆認知行動療法はうつ病や不安障害をはじめとしたさまざまな障害に有効であることが「科学的実証研究」によって証明されてきています。欧米では一部の精神障害の治療において認知行動療法は第一選択の治療法と位置づけられその臨床的評価は定着したものとなっていることもあり,精神医療やセラピーに従事する者が身に付けておくべき、または提供可能な重要な治療法であることが示唆されてきています。昨今の英国や米国の医療現場では認知行動療法士の人材不足が懸念されています。
◆日本においても、2010年度より認知行動療法が診療報酬化され、認知行動療法や認知行動カウンセリングに対する多くの関心が寄せられるようになりましたが、ナショナルスタンダードで治療ができる認知行動療法士(CBT)は日本では数少ないといえるでしょう。
現在、行動療法は、広義の認知療法と行動療法が融合し、行動認知療法(Behavioral and Cognitive Therapy:BCT) もしくは認知行動療法 (Cognitive Behavior Therapy:CBT) と呼ばれており、機能分析心理療法(FAP)や弁証法的行動療法(DBT)、それにアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)などのような第三世代と称する考え方が展開されております。しかしながら、保育園児、幼稚園児、小学校低学年を対象とする発達障害でLDやADHD、アスペルガー、自閉症スペクトラムなどの患児に対して、アップブリンギングを含めた教育的介入を中心とした療育を行う場合は、まだ児童の「認知」に関する部分が発達過程もしくは脆弱であるため、言語行動分析(Verbal Behavior Analysis:VBA)に加え行動療法に重点をおいた行動認知療法が効果的であると考えられます。日本ではCBTとBCTは同意語としてとらえられており認知行動療法と訳されているのが一般的です。
行動療法とは100種類以上の療法の総称です。「行動療法」は、アメリカの公立校での特別支援教育で幅広く取り入れられ、公認行動療法士が担当しています。行動療法の基礎になっているのは、「行動分析学」という学問ですが、スキナー(B.F.Skinner)博士らが数多くの実験によって動物や人間に共通する学習のメカニズムを解明しその基礎を築きました。行動療法は行動分析学を人間の様々な行動の改善のために応用するもので、その応用分野は幅広く、発達障害の治療教育だけでなく、企業の人事管理やスポーツのトレーニング法にまで広がっています。自閉症児やLD、ADHD、アスペルガーその他の広義の発達障害児に対する治療・教育法としては1960年代からアメリカを中心に研究・実践が行われ、早期からのトレーニングを行うことでめざましい成果を上げてきました。ただ、ABAのように施行者の技量や周囲の理解・協力度によって改善効果の表出に違和を感じる場合もありますので一つの療法に偏ることは注意が必要です。行動療法の一例
オキュペーショナルセラピー(作業療法)の一手法である「感覚統合法(SIT)」は、南カリフォルニア大学のJ.エアーズ(Ayres A.J)博士により、1960年代より「学習障害児(LD)」のための訓練プログラムとして実践され、行動療法を基礎とした理論の体系化がされてきたもので日本でもよく知られている手法です。基礎感覚のうち、前庭覚(重力と動き)、固有感覚(筋肉と関節)、触覚の3つを重視し「脳が感覚を処理し構成していく方法の改善」をめざしています。触覚-身体感覚-運動というつながりは、一連の訓練の中心とも言えるものですが、その応用として自閉症などの発達障害児に対してのアプローチも近年盛んに行われています。基本的な感覚統合療法では、これらの問題を「感覚調整」、「行為機能」という枠組みにて整理し、また感覚統合に根ざした感覚運動指導の視点と指導過程の強化に伴い、聴覚処理過程・身体意識・両側の協調・微細運動コントロール・体幹基軸統合・眼球のコントロール・運動知覚・触知覚・視空間知覚等の感覚を統合する役目を担う脳の発達と組織化を促す指導法です。米国では、作業療法士(OT)または作業療法士であって一定の訓練を受けた認定感覚統合療法士(Qualified Sensory Integration Therapist)が主に指導しています。
発達障害児童のカウンセリングやセラピーにあったって、個人が本来もっている能力を全体に向上させる理論と実践法として成果を上げている療法として「感覚統合行動療法(SIBT)」があります。エリックタイバーズ博士などの提唱による、行動療法、認知行動療法の個別指導と並行して、子どもの脳活性と能力全体の可能性を広げる感覚統合療法を融合したものが感覚統合行動療法です。感覚統合行動療法では、深層筋を脳の指令で動かす訓練を行うことで、平衡能力、定位、反応、運動結合などの幅広い能力を開発すると同時に運動結合変換能力群へと発展させ脳の様々な部位を活性化させながら、認知や言語の発達、情緒発達を促していきます。
支援介助者は運動がうまくできない子どもにうまく出来るような取り組みをさせる前に、その子の心理との関わりを見ていく必要があります。少なくとも「できなかったことができるようになる」といった一線を超える力は「脳」の中で発生しています。その結果まっすぐに歩ける、正しい起立ができる、ボールを落とさずに受けることができる、一定時間正姿勢で着席できる、読み書き計算の間違いが少なくなった、会話の語彙が増加した、意欲や自信をもてるようになったなど感覚統合行動療法によるプラクチカルトレーニングは、多くの専門医による長年の臨床的成果の蓄積で証明されています。その理論と実践法の原理はメンタルヘルスやアルツハイマー治療の分野でも応用されてきています。この療法は米国では主に行動療法士(BT、作業療法士(OT)、公認認知行動療法士(CBT)が指導します。多くの事例によって示されているように、早期発見、早期療育によって、改善に結びつく可能性が高くなります。
本ウエブサイトには発達障害という言葉が多く記載されていますが、これは法律や学術的に使用されている用語ですので当センターでは業務上そのまま使用しています。特に障害という単語に嫌厭の念を抱かれる方も多いとは存じますがご容赦下さいませ。