2013年5月にアメリカ精神医学会の診断基準DSM(精神障害の診断と統計の手引き:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)が19年ぶりに改訂されました。DSMは「アメリカ精神医学会」によってつくられた医師のための診断基準ですが、世界中で使われている事実上のグローバル・スタンダードになっており、日本でも、このDSMを使った診断がきわめて一般的です。DSM-5では、DSM-Ⅳで『通常、幼児期・小児期または青年期に初めて診断される障害(Disorders Usually First Diagnosed in Infancy, Childhood or Adolescence)』のメインカテゴリーにまとめられていた各種の精神障害・発達障害が、『神経発達障害(Neurodevelopmental Disorders)』と総称されるようになりました。今回のDMSの改訂によっていくつかの変更が行われましたが、DSM-IVでは、小児自閉症やアスペルガー障害などのサブカテゴリーを含む「広汎性発達障害」とよばれていたものが、DSM-5では「自閉症スペクトラム障害」というひとつの診断名に統合されました。DSM-IVのサブカテゴリーの中でも、「レット障害」はX染色体の異常(MeCP2異常)であることがわかり、自閉症と関連がないために診断から除外されました。また、小児期崩壊性障害(*1)は区別することの重要性が低いと判断されたため統合されています。サブカテゴリーとして有名なDSM-IVのアスペルガー障害の有病率は0.084%であり(Chakrabarti et al. 2001)、DSMでのアスペルガー障害は極めて稀な障害として位置づけられていることからサブカテゴリーから除外されましたが、社会性(語用論的)コミュニケーション障害やADHDなどが加えられました。
また、DSM-Ⅳまでの知的障害の症度の判定は、田中ビネー式知能検査やWISC-Ⅳなどのウェクスラー式知能検査で得られた『知能指数』によって定義されていましたが、DSM-5では<知能指数の数字>のみによる知的障害の診断基準を大幅に見直しており、相対的な知的能力の高低よりも学力領域・社会性領域・生活自立領域において、現在にどれくらいのレベルで適応できているのかを判定するように改訂されています。
通所支援事業所を利用するには自治体発行の通所受給者証が必要となりますが、申請にあたり医師の診断書が求められます。今後、改定されたカテゴリー名での診断書や、通所支援事業所のアセスメント、支援計画等に記載されるものと思料いたしますので、用語等について下記の表をご参考にされてください。診断基準のスタンダードであるDSMではすべての診断名に不全を意味する「障害(disorder)」をつける故で、日本では障害という名前が、DSM-5の日本語訳では従来の『障害』という漢字の表記が、倫理的問題があり誤解・偏見を生む恐れもあるとして、“disorder, disordersの訳語”を『障害以外の表記』に変えることが検討され、現在では、“disorder”を『~症』というように表記し、自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害とスラッシュをいれて併記するようになりました。(DSM5の症名は日本精神神経学会によるDSM5病名・用語翻訳ガイドラインによります。)
DSM-5と同様スタンダードな診断基準であるICD-10とは、異なる国や地域で集計された疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類で、日本では統計法に基づく統計調査に使用されるほか、医学的分類として医療機関における診療録の管理等に活用されています。
平成25年4月1日に施行された障害者総合支援法で障害者(児)の範囲に難病患者等が追加され、障害福祉サービスや障害児通所支援等が利用できるようになりました。当初は対象となる疾病が130疾病でしたが、平成27年7月1日より332疾病に拡大されました。難病患者等の詳細は、ホームページ下の添付ファイルのダウンロードの医療機関向け「周知用パンフレット」をご覧ください。
このHPに記載されている内容は、アメリカ精神医学会によるDSMを参考にしています。 WHOによる ICD-10(国際疾病統計分類第10版)は厚生労働省の統計調査や医療機関における医療記録の管理にも使用されており、DSM5と並び代表的な診断基準です。なお、 診断基準を用いて診断する事が出来るのは専門の医師だけです。適切な指導、療育を受ける為にも、疑問や不安がある場合には、必ず専門の医療機関を受診して下さい。
本ウエブサイトには発達障害という言葉が多く記載されていますが、これは法律や学術的に使用されている用語ですので当センターでは業務上そのまま使用しています。特に障害という単語に嫌厭の念を抱かれる方も多いとは存じますがご容赦下さいませ。